中央ヨーロッパ作家一覧
多彩な美術を育む豊かな文化と暮らし
中央ヨーロッパ美術は、長い歴史の中で時代背景や地理、民族、宗教などの要素により、それぞれ独特な生成発展を遂げ、そこから誕生したすばらしい芸術文化を誇っています。
フランスでは19世紀後半になると産業革命の浸透、資本主義社会の発達、科学技術の進歩による社会全体の変動により美術分野にも大きな影響がありました。
これまでの主流であった新古典主義の美学を維持しつつ、社会情勢にあわせるかのように新しい市民社会に適応する様々な表現が生まれ、当時の新鋭画家の中心にいたマネが1865年にサロンへ出展した『オランピア』は、古典的伝統を近代絵画へリンクさせる重要な作品として知られています。
その後、モネ、ルノアールなど印象派と呼ばれた画家が描いた印象主義絵画が世を賑わすこととなりました。
20世紀になるとピカソ、シャガールなどの画家たちが各国からパリに集結し互いに影響し合いながら美術思想を試みると、その芸術運動は世界中に大きな衝撃を与えました。
そして現代では新しい表現方法が次々と生み出され、複雑な美術体系が構築されるようになりました。
ポーランド、チェコ、ハンガリー等、ヨーロッパの中央エリアでは、第二次世界大戦後から約45年間にわたり社会主義体制のもとにありましたが、1989年から相次いで民主化・自由化が図られ現在ではヨーロッパを構成する国々として政治、経済、文化などあらゆる面でその重要性が高まっています。
これらの国々では、ショパン(ポーランド)、リスト(ハンガリー)、ドヴォルザーク、スメタナ(チェコ)等を育んだ音楽芸術の豊かさはすでに世界的評価を得ています。
絵画の分野でも中世からの芸術的環境と伝統にもとづき、優れた民族的資質と活発な創作活動から生まれた個性的な画風を見ることができます。
歴史的にフランスとの文化交流が深いポーランドでは前衛的で創造的な芸術思潮が絵画にも及び、深い瞑想的作品で知られる巨匠ザヨンツ(1929~2016)や、フランス印象派の流れを汲むウォンツキー(1970~)、現代印象派と評されるコパーニァ(1949~)が活躍しています。
中世ボヘミア王国からその栄光をうたわれたチェコの首都プラハでは、豊かな芸術環境が精神的風土とあいまってレタック(1949~)、ホレイショフスカ(1950~)、イローシェック(1962~)のように幻想的で詩情豊かな作品を描く画家たちが活躍しています。
ハンガリーでは、波乱の歴史的背景から情熱的なロマンティシズムの伝統を継承する巨匠リドヴィッチ(1925~)の気迫のこもった作品や、ピカソ、シャガールなど思想表現主義から影響を受けた鬼才トート・エルノ、またラファイ(1949~)、ホルヴァート(1952~)など地域・時代の風土や暮らしを反映したハンガリーの伝統的な絵画スタイルで知られる素朴画(ナイーヴアート)などに特色があります。
近年これらアーティストたちへの世界的評価の高まり、また同様に日本国内においても熱い視線が注がれています。